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慈恵医科大学 講演会

 今回のフォトレポートは、1月24日に慈恵医科大学で行われた講演会の模様をお伝えします。慈恵医科大学にお邪魔するのは、今年度で2回目になりますが、今回は「人生、ここにあり」という映画を見て、皆の感じたことを話し合いました。(時代背景とあらすじは…)
 1978年、イタリアでは、バザーリア法の制定によって、次々に精神病棟が閉鎖されました。「自由こそ治療だ」という画期的な考え方から、それまで病院に閉じ込められていた患者たちを地域にもどし、一般社会で暮らせるようにしたのです。
 主人公のネッロは正義感が強く、労働の近代化や市場に対して情熱を傾けていました。しかし労働組合のために出した本が型破りだとされ、所属していた組合から異動を命じられます。
 ネッロが行き着いたのは、精神病院の患者たちを地域に戻し、一般の社会で暮らせるようにするというバザリア法によって閉鎖された病院の元患者たちによる協同組合でした。

 しかし彼らは病院を出て自由な社会生活を送るどころか、毎日を無気力に過ごしていました。持ち前の熱血ぶりを発揮せずにいられないネッロは彼らに、施しではなく、自ら働いてお金を稼ぐことを持ち掛けます。みんなを集めて会議を開きますが、個性豊かなメンバーたちはバラバラで、会議はなかなかまとまりません。
 しかし何とか床貼りの仕事をすることが決まります。ネッロは彼らとともにこの無謀な挑戦を始めますが、元患者たちに自分の家の床を触らせようとする人はなかなかいません。そのうえ数少ない現場でも、組合員たちは次々に失敗をします。そんなある日、仕事現場でのアクシデントをきっかけに、彼らの人生が180度変わるようなチャンスが訪れます。


 「人生ここにあり」と私たちの取り組みの共通点は、どこにあるのでしょうか?
 北海道『べてるの家』の活動も、入院生活で保護・収容されていた患者たちを、「当たり前の苦労を取り戻す」という考えの元で始まりました。そして地域での生活の苦労を解決・解消する為に当事者研究は生まれました。
 ネッロが患者たちに与えたのは希望でした。精神障害がありながらも、自分の長所を生かして働き、地域の中で自己決定しながら生活していく。そういう希望を持てるように、ネッロはひたすら患者たちの良いところを褒め続けます。
 「当り前の苦労を取り戻す」ことと「当り前の希望を取り戻す」ことはコインの表と裏のようなもので、実は同じことを表しているのかもしれません。

 講演のトピックとして、「病気を客観視する」というものがありました。当事者研究では「お客さん」「幻聴さん」など言葉を変えて、苦労を外在化します。
 参加者の意見では「外在化することで、病気との距離がとりやすくなった」とか「病気と自分を切り離して考えられるようになった」との意見が。
 私たちには病気の自分以外にも、健康な自分がたくさんあります。病気との距離をとることで、いろいろな自分を発見することができ、希望が生まれる…。当事者研究にはそういう効果もあるのでしょうか。

 他のテーマとしては、なぜジージョが自殺したのか、どうしたら防げたのかということが話題になりました。
 参加者のSさん(以前ビルの11階から飛び降りた経験を持つ方)は実体験をとおして、「もし自分もビルの屋上で誰かが話かけてくれたら、飛び降りなくてすんだかもしれません。誰にも気にされていない孤独感を感じていました。」と語っていました。
 私たちは生きる限り、失敗したり、傷ついたりといいうことを避けられません。しかしその失敗や痛みは、周囲の人と共有されることで、生きる為の有用な経験に変わっていくのかもしれません。

 今回の講演を通して感じたことは、ファーブラのメンバーさんたちが、映画の出演者同様に、「自分の人生の主人公」として力強く生きていることです。生徒さん達にも「人生ここにあり」の中で起こっていることが、決してフィクションではなく、現在の日本の精神保健福祉でも着々と実践されているという事が伝わったのではないかと思います。
 今回のような貴重な体験をご提供いただいた香月先生、生徒さん達、また参加していただいたファーブラメンバーさんたち、本当にありがとうございました。

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